目次
2020年:世界の果て RADWIMPS
野田洋次郎コメント
あれから9年、今年も曲を作りました。期せずして2020年3月11日現在、世の中はウィルスという社会的危機の中にあります。情報が氾濫し、歪んだ感情も溢れているように感じます。人々の姿こそウィルスよりも脅威に感じる瞬間があります。何かのキッカケで一気に崩れ落ちていってしまうのではないか、そんな緊迫感があります。それでも、それだからこそ今年も変わらずあの3月11日に想いを巡らせ、そこに『今』の空気を混ぜて一つの曲にしたいと思いました。なるべく素直に、思いのままに作った結果今年はこのような曲になりました。絶望感がありながら、どこかそれは懐かしく優しいものに自分は感じたのです。色んな声があると思いますが、受け取ってもらえたら幸いです。
年々薄れていく記憶。それでも癒えることのない傷。新たに生まれる災害。すべての痛みに向き合っていたら到底心が追いつかない時代に僕たちは生きているのかもしれません。日々の小さな幸せに、眼を向けることを忘れずに生きたいです。
今年も録音は菅井さん、映像は島田さんにお願いしました。ありがとう。
来年は震災から丸10年。一つの節目となります。この国で10年間歳を重ねてきた僕たち自身への一つの投げかけにもなる年だと思います。
「あれから、僕たちはどう生きたか」
そんな問いに、まっすぐ眼を見てこたえられるように、生きようと思います。
9年前の東日本大震災で亡くなったすべての命に、今も被災し続けるすべての方々に、合掌。
洋次郎
世界の果て 歌詞
明日もしもこの世界が終わんなら
それは地獄なのかワンダーランド
誰一人も分からんなら
考える価値もないのかさてさて 最後の晩餐は何にしようとか
呑気に言ってられないよな
気が触れずに笑えんのか
正直自信はないよなそれなら僕は行くよ
君の元へ行くよ
せめて僕の腕の中には君の 顔をうずめて襲いかかるその終わりの
君の視界を覆い
ワンダーランドまでの 短い一秒だけ「さよなら」を時が経つに連れて徐々に水底に
ゆっくりと沈んでいくかの
ように君の顔もおぼろげに
なっていってしまうのはなぜ乗り違えたようで降りる駅を間違えたそんな僕らが
ワンダーランドで出逢うには
どの便に乗ればいいんだろう
どこで降りればいいんだろうこの世界の淵から
一、二の三で飛ぶから
「今だ」と叫んでよ 腕を振ってよ 力の限り海風にかき消されない
波に飲み込まれない
一筋のあなたの 声を命の糸に結ぶよ君の元へいくよ 必ずや向かうよ
君の姿形 色とか匂いのすべてなくとも心配せずいてよ この世界で君を
見つけたのと同じようにたやすく たどり着くから引用元:RADWIMPS公式サイト
2019年:夜の淵 RADWIMPS
野田洋次郎コメント
今年も曲を作りました。
タイトルは「夜の淵」。
東日本大震災から8年が経ちました。
そしてこの8年の間にまたいくつもの災害、悲劇がこの国を襲ってきました。
昨年は北海道、関西での地震、西日本での豪雨など例年以上に災害が多発した年でした。
昨年地震が起きた夜、停電で真っ暗な中SNSなどで恐怖と闘いながら朝を待つたくさんの声を受け取りました。あいも変わらず何もできない自分にもどかしさを感じながら、せめて子守唄に、ほんの少しの心の安らぎになったらいいなと思い今回の曲を作りました。そこにさらに歌詞を加え、編曲し、レコーディングしたものが今回の曲です。
普段の生活は不自由を味わった時にその幸せに気づきます。たった一つの電気が、あったかい部屋が、当たり前にそこにいる家族が、お風呂が、食事が、かけがえもなく幸せなことに気づきます。そんな小さいかもしれないひとつひとつのために僕たちは日々を生きているんだと実感します。
東日本大震災。今も数多く行方がわからない方がいます。そしてその帰りを待つ家族の方がいます。元の場所に帰れない方がいます。原発の修復、廃炉作業をするたくさんの方がいます。オリンピックももちろんいいけれど、なんだか色んなことに蓋をして、忘れてお祭りになるのだけは嫌だなと、思います。
8年が経ち、震災を知らない世代が増えていきます。残念だけど、きっと定期的に、どうしたって地震や災害は襲ってきます。僕たちの日常を奪っていきます。その度に、思いやって、思い合ってひとつになれる国であったらいいなと心から願っています。
最後に、震災で亡くなったすべての命に、今も被災し続ける方達に、合掌。
洋次郎
夜の淵 歌詞
静かな 夜の淵
真っ黒な 空にぽつり
ひとつまた ひとつ光る
あれは いつかの光もう少しで 朝がくる
眩しいほどの 光連れて
それまでは 心の中
小さなロウソク 大事に灯し
夢で手をつなぎ 一緒に眠ろうあんなに近くで光る 隣同士の星よりも
僕らは ずっと近くで 息をする運命めいて結ばれた あの美しい星座よりも
僕らは ずっと近くで 想いあう何のため 生まれたのか
わからない 僕たちだけど
涙を流すためじゃ
ないことだけは たしかさそれだけは たしかだ
あんなに近くに見える 隣同士の星よりも
僕らは ずっと近くで 息をする運命めいて結ばれた あの美しい星座よりも
僕らはずっと近くで 想いあう
僕らは ぎゅっと手を 繋ぎあう
2018年:空窓 RADWIMPS
野田洋次郎コメント
あれから7年が経ちました。今年も曲を作りました。3月11日には間に合わなかったのですが、今日発表します。曲名は『空窓』です。
昨年、福島県立浪江高校は3月31日をもって休校しました。その最後の卒業生の生徒さん達から文章を受け取りました。今年はそれを元に歌詞を書きました。
震災が起きた瞬間の気持ち、家族と離れる気持ち、残る人、離れる人、7年という時は10代にとってあまりにも大きな時間です。体験していない僕には想像することしかできません。できるだけその言葉から受け取った想いを、過不足なく音にのせようと思いました。ぜひ、聴いてください。
今年も映像はコトリフィルムに作ってもらいました。2018年3月11日の空です。不思議な空でした。音は今年、菅井さんと共に長年一緒に仕事をしてくれている澤本君にお願いしました。
今でも震災の影響で不自由を強いられている方々に早く安らかな時が訪れますように。そして震災で亡くなったすべての命に、合掌。
洋次郎
空窓歌詞
あれからお前は どうしているか
見慣れぬ景色は もう慣れたか俺は俺でさ あれほど聞き馴れなかった
はずの言葉が もう板についたよあの時の僕らは何も分からず 親父が言うまま 家を出たんだ
2日か3日ですぐ帰れるものと ばかり思ってた あの日から7年ケンカしたまま別れた友や 家を出たきり帰らぬ兄や
言えないままの ありがとう、ごめんが宙ぶらりんのまま今日まで来たよ時が僕らを大きくするけど 時は僕らをあの場所から遠ざける
僕らの故郷は今でもさ 僕らを待っててくれてるだろうか新しい友と新しい街で 新しいただいまを今は言ってるよ
寂しさ、嬉しさと ほんの少しの 後ろめたさと 一緒に生きてるよ帰りたいかと聞かれても すぐ答えられない 僕がいるよ
帰りたいのは あの場所よりか あの人とあの時に 帰りたいだけさよならをちゃんと 言える別れは 幸せなのかも なんて思ったよ
僕はどうやら 強くなった 強さが何かは よく知らないけど
あの時 どうやら 涙は流し切った時が僕らを 大きくするけど 時は僕らを あの場所から遠ざける
僕はどうやら 強くなった 弱さが何かは 知らないけど
心の蓋仕方を知っただけかも でもそうでもしないと やってこれなかっただけど今日だけはこの蓋を 開けてあなたに 会いに行く
引用元:RADWIMPS公式Youtube
2017年:なし
2017年は3.11に公開された曲はありませんでした。
2016年:春灯 RADWIMPS
野田洋次郎コメント
今年もこの日がやってきました。
あれから5年。
とても長いような気もしますが、あっという間だった気もします。
中学1年生だった人は高校3年生に。1歳だった子は小学1年生に。
25歳だった僕も30歳になりました。
5年という月日の間に『復興』の度合いも地域により差が開いてきています。未だに福島第一原発の事故は収束していません。コントロールできていません。避難解除を受け、着々と街も整備され、前に動き出した地域がたくさんあります。一方でいまだ故郷に帰れない人がたくさんいます。仮設住宅に暮らしながら地元に帰る日を待つ人たちがいる一方、故郷に帰ることを諦め新しい場所での生活を始めている方もたくさんいます。震災の後遺症で亡くなる人もいまだにいます。
原発の必要性の有無、様々なことが言われ物事は複雑に語られていきます。ただ、あの震災と津波だけだったら、今ほど復興に差が生まれ、地元に帰ることを諦める人は少なかったはずです。立ち入りさえ制限される区域は存在しなかったのです。『フクシマ』という言葉の響きが、2011年3月11日以前のものに再びなるには、あと何年かかるのでしょうか。
心配すること、ただただ復興を願うことしか相変わらずできない自分なので、また曲を作りました。『春灯』と書いて「しゅんとう」と読みます。
ぜひ聴いてください。
来年以降も曲を作るかはわかりません。当たり前にやるかもしれません。ただ3月11日の、あの悲しみだけを切り取って一つの作品を作ることに少しずつ、違和感が生まれてきました。どの楽曲にも、含まれているように思うからです。逆にこの5年の間にも悲惨な事件、事故、大きな喜び、様々ありました。そしてそれらに常に影響されながら音楽を作っています。すべて混ざり合って「今」を生きている自分の音楽になっています。
あの大きすぎる体験を僕たちは忘れてはいけないと思います。次いつ来るかわからない大災害の被害を、少しでも食い止めることであの日の震災の意味を変えることができます。
世の中を見回すと人災、天災問わず悲劇は次から次に起きているように思います。感情が追いつかないほどめまぐるしい世界です。くじけそうになります。でもだから気付かされる人間の底力もあります。なるべくなら、光に眼を向けたいです。手を取り合って生きたいです。
こんな世界にも、鳴る意味のある音をこれからも鳴らしていきたいです。
今年も映像はコトリフィルムのみんなに作ってもらいました。僕がレコーディングで行けなかったので、今年はコトリスタッフ総出で臨んでもらいました。空は南相馬の空です。毎年、毎年、本当にありがとう。帰りの運転も気をつけてね。音源も例年と同じく菅井さんに協力してもらいました。感謝。
そして文章と映像を送ってくれた皆さん、どうもありがとう。一つ一つ読んでいるだけで、涙が出そうになりました。
震災で亡くなった方の魂が安らかでありますように。
今も被災し続ける方々に平穏な日々が訪れますように。
そして理不尽な力に、奪われたすべての命に、合掌。
洋次郎
2015年:あいとわ RADWIMPS
野田洋次郎コメント
今年もこの日に曲を作りました。
タイトルは『あいとわ』。ぜひ、聴いてください。
あれから4年が経ちました。
もう二度とあの日を思い出したくない人。
大切な人のことを忘れたくない人。
今でも大事な人の帰りを待つ人。
新しい生活に向かう人。
その間を行き来する人。
誰ひとり間違ってないし、自分だけが決めることのできる意志だと思う。
僕はどれだけ分かろうとしても分からないし、分かった気になんてなりたくない。どれだけ手を伸ばしてもそっちにはいけないから、せめて自分の場所からあの日の出来事、眼に映る出来事と向き合い続けたいと思う。
映像は今日の陸前高田の空です。向かう途中大雪で心配してたけど、朝陽と共に晴れてくれた。美しい空だった。お邪魔しました。
録音は菅井正剛さん。気持ちのこもったミックスをどうもありがとう。
ストリングスのアレンジを徳澤青弦さん。時間のない中で力を発揮してくれてありがとう。
映像は今回もコトリフィルムの島田大介。寒い中、眠い中ほんとうにありがとう。大ちゃんがいるからいつもできます。だいすき。
花で協力してくれたedenworksの篠崎恵美さん。突然だったのに素敵な花をたくさんありがとう。
ロウソクの協力をMeltcandleのチエさん、手作りのあったかいキャンドルをありがとう。
諸々の準備、手配、えびちゃんこと蝦名あすみさんありがとう。
疲れてる中での長時間運転、タジこと田島護ほんとうにご苦労様、ありがとう。
現在でも仮設住宅で暮らす方たちは5万人を超えています。
かつて住んでいた場所から移って避難生活を続ける人は合計で22万人を超えると言われています。その方々の『日常』が早く戻ってきますように。
四年前の震災で亡くなった方たちに、今も被災し続ける方たちに、そして世界中で理不尽に奪われるすべての命に、合掌。
洋次郎
2014年:カイコ RADWIMPS
野田洋次郎コメント
今年も、この日に曲を発表します。
タイトルは『カイコ』。
この日にふさわしいのかどうかわからないけど、3年前の出来事があって産まれた曲。ぜひ聞いてください。
今日であれから3年。もう3年。やっと3年。まだ3年。
何かを変えられるのは、今生きている人たちだと思う。
あの出来事に意味を与えられるのも。無かったことにするのも。
あんな痛みをともなって蒔かれた種なら、せっかくなら、ちゃんと咲かせたいと僕は思う。
レコーディング、映像は例年と同じく菅井正剛さん、コトリフィルムのみんなにやってもらいました。どうもありがとう。大ちゃん、今年も徹夜させちゃったね。ほんとにありがとう。
そして映像の方でロウソクの画像で参加してくれた方たち、どうもありがとう。
もうここにはいない魂に、届きますように。
今年も映像の空は今日の空。どこまでも透んで通っていた。3年経ってもちゃんと空は青いまま。
この空がずっと続きますように。
遅々として進まない国の被災者、被災地への復興支援、仮設住宅で過ごす方たちへの生活保護対策には抗議します。今やるべきことをやってほしい。
最後に、三年前の震災で亡くなったすべての命に、
今もなお被災し続けるすべての人の心に、合掌。
洋次郎
2013年:ブリキ RADWIMPS
野田洋次郎コメント
新曲が完成しました。
名前は『ブリキ』といいます。
やっぱり自分たちにできること、したいことはこれしかないや。
ぜひ聴いてください。
一年前から、どれだけのことが変わったんだろ。
たくさん変わったようで、何も変わってない気がする。
毎日を日々こなして、自分と世界を新しくしていくのは大事だけど、
この日くらいはただただ思いだす日でもいい気がする。
狂った世界にばんざい。
それでも愛すよーー。
レコーディング、撮影は去年と同じ方たちにやってもらいました。
エンジニアの菅井さん、コトリフィルムのみんなどうもありがとう。
映像は今年もギリギリになっちゃった。
土壇場まで一生懸命やってくれた大ちゃん、そうじろうほんとにありがとう。
映像の空は今日の空。今日の夕陽。今日の青。
晴れてよかった。たくさんの気持ちが、空の上に届きやすくなったかも。
最後に、二年前の震災で亡くなったすべての命に、
そして今もなお被災し続けるすべての人の心に、合掌。
洋次郎
2012年:白日 RADWIMPS
野田洋次郎コメント
今日新曲が完成しました。
あれから一年経つこの日をどう迎えるかずっと考えてたらどうしてもこの曲を録りたくなって、昨日の昼にメンバーに連絡しました。
どうしてもこの日に演奏して歌いたかった。
そしてついさっき完成しました。
2012年3月11日生まれ。名前は『白日』。
とても荒削りで不格好だけど、間違いなく僕たちの新たな大事な子供。
この曲をYouTubeにアップします。
産まれたばかりの姿を聴いてください。
映像は島田大介率いるコトリフィルムチームに撮ってもらいました。
こちらも昨日の夜急遽お願いしたのにも関わらず愛のある映像を徹夜で、ついさっきまで作ってくれました。
わがままを聞いてくれました。
ちょうど一年前のように。
ありがとう、大ちゃん。
そしてエンジニアの菅井さんも同じく、昨日新曲を録りたいとお願いしたところ当日にも関わらず快く承諾してくれました。
そしてたった今まで最後の作業をしてくれていました。
ただただ深謝。天井知らずのナイスガイ。
素敵な音をありがとう。
曲が産まれてからラッド史上最短での編曲、録音、ビデオ制作、発表になりました。
それらを可能にすべく尽力してくれた方々、本当にありがとうございました。
最後に、一年前の震災で亡くなったすべての命に、合掌。
引用元:RADWIMPS公式Youtube